7/19(土)オンラインセミナー「日本語教師の働き方図鑑~フリーランス日本語教師のワークスタイルが知りたい!」イベントレポート

2025年7月19日(土)一般社団法人日本語研究会主催のオンラインセミナーを実施しました。

たくさんのお申し込みをいただき、当日は300名を超える方々にご参加いただきました。ありがとうございました。

日本語教師の活躍の場のひとつとして、タイトルの「フリーランス」という言葉に興味を持たれた方が多かったようです。

今回は、お二人の先生方にお話していただきました。その内容をまとめました。

 

■安井友美先生

私は、オーストラリアの小・中・高で、アシスタントとして日本語教師デビューをしました。帰国後は日本語学校で教えていましたが、1年後に営業職に転職しました。30歳ごろに再び日本語教育業界に戻ってきて、今に至ります。日本語学校では、専任・教務主任を経験し、直近では新規校として立ち上げた日本語学校の校長やグループ校の福祉系専門学校の理事も務めていました。

多種多様な日本語教育に興味があったこともあり、留学生以外にビジネスパーソン・第三国定住難民、難民支援協会、JICAなどの様々なプログラムにも参加してきました。

今は、日本人対象に「やさしい日本語」の使い方や、外国人とのコミュニケーションの取り方の研修を実施したり、外国人も日本人も両社が学べるオリジナル教材を制作して企業側に向けた研修も担当しています。

気がついたら、教え子の国籍は50か国以上になりました。

私が日本語教師になった当時は、日本語を教える=日本語学校で働くというイメージしかありませんでしたが、今では誰にどこで教えるのかについて考えた時、多種多様な現場がありますね。

まずは、自分がどんな場所でどんな対象者にどんな方法で日本語を教えていきたいのかをイメージしてみましょう。別の本職を持っていたり、家族の介護・小さなお子さんがいたり、いろいろな制限があったとしても、まずは自分がどんなことに興味があり、自分の強みはなんなのかを考えて一歩踏み出してみることをおすすめします。

では私自身がどんな風に自分の「興味と強み」を見つけたかお話します。

日本語教師は天職だと思っていましたが、その中で本当にやりたいことは何だろうと探していました。そもそも「日本語教師の役割は外国人向けなのだろうか」という違和感がずっとありました。外国人限定ではなく「日本人・外国人・性別・肩書・・などに関わらず、居場所づくりのきっかけを作りたい。誰もが安心して暮らせる社会を作る」ということに考えが行きつき、それをミッションにしています。そのためのツールが「日本語教育」なのだと気づきました。

次に私の強みですが、日本語教育・営業力・傾聴力・マネジメント力・コーチング・メンタリング・キャリアコンサルティングなどがあげられると思います。周りの人に聞いてみると、自分では気づかなかった強みが見つかると思います。

現在の仕事はそんな「興味と強み」から広がっていきました。

そもそもフリーランスになったきっかけは、地元に戻りたかったということがありますが、地元には日本語学校がなかったのでフリーランスになりました。それまではとにかく経験を積むことだけを考えていましたが、よく相談を受けるようになり、次のステップとして今までの経験をアウトプットしていけるのではないかと自信がついたということも理由の一つです。

集客については、私の場合はすべて紹介です。SNSが苦手なので、まずは家族も周りの人たちに、今やっていることを伝えてみました。異業種の友人や地域のコミュニティ、趣味の集まりなど、雑談の中から仕事につながったことがたくさんあります。

また、今の働き方で重要視していることは「結果」です。どんな風になりたいかというクライアントや学習者のニーズをしっかり聞いて、そのためにどんなことをしたらどんなふうに結果がでるよと伝え、それを実際に行って結果を出していくようにしました。そうすると次の仕事につながっていきます。

次に、収入面でのアドバイスです。
まず考えなければいけないことは、「収入の柱を何本作るか」ということです。

例えば、日本語学校の非常勤は長期の休みに入ると収入が減ります。プライベートレッスンも仕事の都合やドタキャンや急な帰国などでキャンセルになることもあり安定しません。ひとつに絞るのではなく、いくつか柱を作って、何コマ担当したらいいのかとか、単価はどうしようなど、その比重を少しずつ変えていけばいいと思います。

フリーランスと聞くと、なんでも一人でしている方もいるでしょう。私は、一人でやったら何でも自分で決められるし楽だし自己責任ですべて選択できる反面、独りよがりになっていないか、客観性が欠けてないかと恐怖に思うことがあります。

一人でやっていくには限界があるので、同じ考えで動ける仲間が集まってチームで活動することを始めています。お互いが持っている得意分野を提供し合ってチーム全体が成長していくことを目指しています。

\安井先生が日本語教師として大事にしていること/

①安心して学べる環境づくり

間違っても大丈夫、それが成長のチャンスという場づくり
ここにいてもいいという居場所づくりのきっかけを意識

②気づきが生まれる授業作り

答えを言うのではなく常に考えさせる。どうしてそう思うのかを促していくことで自ら気づくようになっていく

③伴走しながら自立支援へ

最初は一緒に頑張ろうと伴走するが、自分で気づけたり考えたり行動できるようになると、自己肯定感が上がっていくので、そのあとは離れて支援する

・内野里美先生

Mekimeki(めきめき)という名前で個人事業主をしています。

私のキャリアのスタートはメキシコです。メキシコの日本語学校で3年、田舎の大学で3年半ぐらい教えていました。日本に一度帰国したあと、タイの公立の女子高や大学で約10年働いて帰国しました。現在はオンラインで日本語を教えながら、専門学校の非常勤講師もしています。やさしい日本語の講師や、海外ルーツの子供たちの学習支援や居場所づくりのボランティアもしています。

小さいころから日本で働くというイメージを持っておらず、海外に行くんだ!と考えていました。大学で副専攻に日本語教師養成があることを知り、履修すると中国の大連とメキシコに教育実習に行けると聞き、それを目標に学び始めました。日本語を客観的に見るのがとても面白く、大学の実習として地域の外国人に毎週教えるようになりそこで手ごたえを感じました。

目論見通り、大連とメキシコで教育実習をし、そのままメキシコで採用してもらいました。
これが教壇デビューです。その学校は幼稚園から大学までの一貫校で、小学校から日本語の授業が必修でした。

現在の仕事についてですが、収入の柱は大きく4つです。

①オンラインの日本語教師。プラットフォームを使っているものと、個人契約をしているものの2つ。海外在住の様々な国籍の10名ほどに週1.2回教えています。
②他のオンラインスクールからの仕事。小学生への国語指導など。
③日本語教師のメンター・講師業。日本語教師として身を立てるためのノウハウを勉強し、面白い授業をするための方法や授業改善アドバイス、教案指導
④専門学校日本語学科での非常勤講師。日本語学校で教えるつもりはなかったが、海外でのキャリアが登録日本語教員の申請には影響しないことがわかったこともあり、専門学校に勤務しています。その他、県が行っている有償ボランティアで子供の教科支援や外国にルーツを持つ子供の居場所作りなどもあります。

本当にたくさんの子どもから大人まで、日本在住・海外在住、様々な環境にいる人たちに教えることができています。このような働き方は、どこかの学校に所属してフルタイムで働いているとできない働き方ですし、自分の性格にとても合っていて満足しています。

集客方法ですが、2つのプラットフォーム(日本語を勉強したい人と教えたい人のマッチングサイト)に登録しています。
ゼロから自分自身で集客するよりも良いところは、入金がスムーズであるということです。ただ、手数料や銀行の振込手数料や為替の手数料もこちらが支払わなければなりません。また、他の講師との価格競争になりがちなので、バランスやプロフィールの書き方などもテクニックがいります。

もう一つの集客方法はSNSからの個人契約です。Facebook・Instagram・TikTok・LinkedInを使っています。一番動かしているのはInstagramとTikTok。個人契約のいいところは手数料がないところが一番のメリットです。そして問い合わせしてくる学習者は、私を見つけて自分でコンタクトを取ってくるので割と熱心な方が多い印象です。それでも、約束していたトライアルの日に来なかったりすることもあります。

また、SNSで集客するのであれば継続的にコンテンツを考えるのが大変です。最近はAIを賢く使って、発信を頑張っていけばもう少し個人での集客が増えるのではないかと考えています。オンラインでの他の日本語教師の方とのつながりができるとそこから声がかかったりすることもあるので、SNSを戦略的に使えるとツールとしてとても有効です。

個人事業主として大変なことですが、まずは入金管理です。PayPal・Wise・Revolutなどの国際送金サービスがいろいろあるので、その契約も手間がかかります。

また、時差の調整も、登録しているプラットフォーム上だと時差を計算してくれるのですが、個人だと学習者の居住地との時差を計算して面談や授業を組まなければいけないので手間がかかります。特にヨーロッパや南米はサマータイムがあるので10月は注意しています。こちらの時間と学習者の時間のどちらをずらすのか調整しなければなりません。

SNSでの集客の場合、どのように契約まで進めているのかというと、まず、どんなことがやりたいのか、3か月後の目標、一番近い将来どんなことをしたいのか将来どうなりたいかをヒアリングします。そして悩みを聞きながら、どんな教科書がいいか、どう進めていくかをカウンセリングして一緒に話し合います。そのあとトライアルレッスンを気に入ってもらえたら個人契約するという流れにしています。

料金ですが「1コマいくら」ではなく、最低4か月、16回は買ってもらえるようレッスンをパッケージ化しています。そうすることで急にやめてしまうリスクを少しでも減らすことができると思っています。自分で金額設定できるのがフリーランスのいいところですし、教材や教え方の縛りがないのでオーダーメイドのレッスンとなり、チャレンジングなことができるのが魅力でもあります。

また、地域とのリアルなつながりもとても重要だと思っています。高校でのやさしい日本語講座の担当のお話も、たまたま参加した研修でお声がけいただいたものです。

フリーランスは、収入が安定しないですし、自分で集客しなければなりませんので行動力が試され、常に緊張感があります。年金・国保・確定申告も自分で行っていかなければなりません。

 

\内野先生が日本語教師として大事にしていること/

①日本語を勉強することでワクワクする人を増やしたいというビジョン

自分自身がスペイン語を話している時とタイ語を話している時は気分が違う
それぞれの言語を通して母語である日本語を見るところに語学学習の面白さを感じているので、そんな気づきの場面になるべく多く立ち合いたい

②ハッピーは伝染する!

オンラインの仕事が多いが、なるべく画面の中に伝わるように笑顔で楽しく授業をするということを心掛けている

③自分も学習者も楽しい授業を!

そもそも自分が楽しく授業ができなければモチベーションを保てない
授業づくりで心掛けているポイントのひとつ

最後に・・・

お二人に共通することとして、教育機関に所属した経験もあり様々な経験を積んだ上で、「興味と強み」から、今のご自身に合う働き方を見つけたのだなと感じました。

どこで・どんな対象者に・どんな方法で教えていきたいのか、皆様の考えるヒントになったのではないでしょうか。

日本語研究会は今後もオンライン講演会やシンポジウムなど、さまざまな企画で情報発信をしていきますので、
ぜひ仲間になっていただければ幸いです。